超高齢化社会と言われる現代では、子供が親よりも先に亡くなってしまう逆縁が起きることも 珍しくありません。 厚生労働省の発表では、平成22年での日本人の平均寿命は男性で79.64歳、女性で86.39歳との ことです。 ただ、寿命が延びたといっても、すべての人が長生きするとは限りません。 寿命が延びたことによって、逆縁が起きてしまうケースも起こると考えられます。 逆縁が起きてしまった場合の相続について、次のような例で考えてみましょう。 甲さん(90歳)の奥さんはすでに亡くなられています。 甲さんには、長男A(67歳)、次男B(64歳)、三男C(61歳)の3人の子供がいます。 A、B、Cにも子供がいて、Aの子供はX、Bの子供はY、Cの子供はZとします。 甲さんの財産は、自宅(2000万円)と預貯金(500万円)と株(500万円)とします。 甲さんが亡くなり、遺言書がない場合は、3人の子供が相続人になり相続財産の1/3(1000万円) ずつ相続することになります。 甲さんが亡くなる前に、すでに長男Aが亡くなっていた場合は、長男Aの子供Xが 長男Aの相続分を引き継ぎます。これを代襲相続といいます。 甲さんが長男の家族と同居していた等の理由で、次のような遺言をしていた後、 長男A→甲さんの順で亡くなった場合はどうなるでしょう? ・長男Aに、自宅を相続させる ・次男Bに、預貯金を相続させる ・三男Cに、株を相続させる 次男Bと三男Cには、遺言書に書かれている通り、預貯金と株が相続されます。 問題は長男Aに相続させる予定だった自宅です。 遺言によって財産を受け継ぐ予定の人が、遺言者よりも先に亡くなった場合は、 遺贈の効力は生じないとされています。(民法994条1項) つまり、長男Aが先に亡くなったことにより、長男Aに自宅を相続させるという部分の遺言は 無効となり、長男Aの子供Xにも引き継がれないことになります。 では、この自宅はどうなるかというと、相続人全員の共有財産となり、 相続人全員(次男B、三男C、長男の子供X)の協議で、どのように分け合うかを決めます。 したがって、本来であれば、長男A(の家族)に自宅を渡すつもりが、思い通りにいかなくなる 可能性もあるのです。 このようなことを想定して、あらかじめ遺言書に、 「相続時に長男Aが死亡していた場合には、子供Xに自宅を相続させる」 という1文を加えておくといいでしょう。 また、可能であれば、このように状況が変わった時点で、遺言書を作り直しておくことが 紛争防止に役立つと思われます。 |